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北総支部総会 記念講演
「企業変革支援プログラム」と
「エコノミックガーデニング」で
 企業の繁栄と長生を

2017年4月25日 ホテルマークワンCNT
講師 拓殖大学 教授 政経学部経済学科長 山本尚史氏
 エコノミックガーデニングとは、地域経済という庭に中小企業というきれいな花が咲くように、地元の人々がアイデア、お金、知恵などを出し合ったりして関わっていく「地域経済活性化プログラム」の名称です。米国の中小企業白書2006年度版で取り上げられました。

 今日お話しするポイントは、地域経済の未来は雇用の拡大にかかっており、その雇用をつくるのは地元中小企業だということです。さらに、地域経済の望ましい未来、すなわち「誠実経済」の実現にむけた5つのステップを中心にお話していきたいと思います。

中小企業2017年問題
中小企業における2017年問題は、経営者の高齢化、主任技術者の高齢化、従業員の高齢化です。その結果、事業承継がうまくいかなければ、何年か後に企業がなくなります。地元の企業はネットワークで存在していますので、取引先ごと消えるという恐ろしいことも予想されます。そうならないように後継者を探していく必要がありますが、子供には継がせたくない、あるいは子供が継ぎたくない。取引先や対銀行関係を考えると従業員に継いでもらうのには抵抗があるなど、悩まれている事業所が多いのが現状です。また、中小企業では会社の財産と社長の財産が混在していることが多いため、中小企業のM&Aは非常にやりにくいと金融機関の方は言います。

望ましい未来「誠実経済」へのステップ
地域経済はどうすれば持続可能になるのか。一般論として、人口10万人程度の地方都市において、30代の従業員が年収400〜500万円得られる仕事に10年間勤められる、そういう仕事を地元企業が創出することが理想です。若い男性が年収300万円ほどあると結婚しやすくなります。そして一般的には世帯収入で400万円あると住宅ローンが組みやすくなります。地方都市の場合は世帯収入で500万円あると、軽自動車を2台持て、子供2人のための学費が貯金できます。30代の方が年収400〜500万円得られる仕事があればそのまちに人々が長く住むことができます。そういう雇用を地元の中小企業がつくれるかどうかが大きなポイントになります。
 そういった望ましい未来への構図、モデルを「誠実経済」と私は名付けました。誠実経済に至るまでに必要な5つのステップがあります。
 1つ目のステップは「地域土地柄認識」です。自分たちの土地をどのように認識しているか。地域の良いところ、問題点をどれだけ認識しているか。認識次第で「地域経済生態系」が変わっていきます。
「地域経済生態系」が2つ目のステップです。地域経済生態系とは、地域の「産業のDNA」、地域の「稼ぐ力の源流」と言い換えられます。重要なことは、地域の中にどのようなキーパーソンのネットワークがあるかです。キーパーソンとは、地域の首長だけでなく、何かをやろうとするときに動きをつくる人、助ける人、外からお金や人材や技術などの資源を引っ張ってこられる人です。ネットワークは、ある一定のルールに従って動きます。ルールは各地域で違います。文章になったルールの例は条例です。同友会関連でいうと、中小企業振興基本条例です。また、地域の慣習や空気もルールにあたります。
 地域経済生態系において重要なことは学習です。学習しやすい組織、地域づくりになっているかどうかです。組織や地域のトップがワンマンだと学習する風土は生まれません。そして資本が必要です。資本とはインフラや有能な人材やお互いの信頼関係のことです。先ほど地域土地柄認識の話をしましたが、自分たちで自分たちの土地を信頼していないと、お互いの信頼関係が損なわれます。また、学習しようと思わないでしょう。ネットワークもスカスカでしょう。ですから地域土地柄認識がより高度になるほど地域経済生態系は豊かなものになるでしょう。

人材の適材適所
 人についてもう少しお話ししたいと思います。人材の適材適所についてです。これは米国の心理学をベースにしています。人間は得意とする事柄で4つのタイプに分けられます。
 性格を東西南北にそれぞれ当てはめていきます。まず北向きの理論家。理論家は考えることが得意で、長期計画、戦略が得意です。しかし人情がわからないという欠点があります。反対側の南向きの人情家。目の前の人の気持ちがわかるカスタマーサービスが適所です。
 東向きの活動家。好きなことをとことんやります。研究開発や営業が得意です。ところが締め切りが守れない、計算と秩序が苦手です。その反対が西向きの管理者。秩序を守り計算が得意ですが、腰が重くなかなか動かないという面があります。
 それぞれ二つのタイプを選び組み合わせるとどうなるか。理論派と管理者を組み合わせると参謀本部ができます。活動家と人情家だと、お祭り実施委員会ができます。
 何年か前に私が在籍する大学の1年生が調べてくれたのですが、学園祭実行委員会の8割が活動家、2割が人情家でした。そういった実行委員会ですから、会計報告が遅くて間違いが多く、翌年のことを考えていないなどの問題が挙げられていました。
 一つの組織で2タイプいたら片寄る、3タイプいたらなんとかカバーできる、4タイプいたら非常にバランスが良いです。ただし、理論家と人情家、また活動家と管理者も対立しやすいのです。個人個人で仲良くなれるかどうかは別問題ですが、組織としてバランスが上手くいくのは4方位の人材が揃ったときです。

実践的戦略「エコノミックガーデニング」
 次に、誠実経済への3つ目のステップ、「実践的戦略」です。
実践的戦略の1つである「エコノミックガーデニング」は、1990年代に人口5万人のコロラド州リトルトン市から始まりました。元々、軍需工場が郊外にありましたが、冷戦の終結により工場が閉鎖され多くの失業者が発生しました。そこで、地元の企業の力を増やす施策が必要だという考えからエコノミックガーデニングの原型が始まりました。
 リトルトン市の経済政策の特徴は、地元企業のネットワークを拡大することと先端企業同士をマッチングさせることでした。先端企業の社長はプライドがあるので行政の話を聞きたくないが、他の先端企業の話は聞きたい傾向にあるようで、それぞれの社長をマッチングさせると意外に効果は高かったそうです。
 もう一つの特徴は情報ツールを活用したことです。いま米国では企業データベース、消費者動向データベースが大変充実しています。リトルトン市では、こうしたデータベースから市場動向、競合企業情報、潜在的な取引先リストなどを作成して、地元企業の経営者に提供しました。
さらに、インターネットマーケティング、SNSなどのソーシャルメディア、地理情報システム、これらを活用してリトルトン市では地元の企業を応援し続けました。
 その結果、エコノミックガーデニングをやる前の1990年から2005年の15年間の実績で、市内の就業者が136%増、これは州平均の3倍だそうです。市の売上税の税収が190%増、つまり3倍になりました。期間を限定し2000年から2005年の時期を見ると、この時期はアメリカではITバブルが崩壊し散々な目にあったのですが、リトルトン市では就業者数が35%増えて、州平均の30倍でした。エコノミックガーデニングをやっていなかったらこれだけの結果は出ないだろうと思われます。

日本版「エコノミックガーデニング」
 日本のエコノミックガーデニングを考えていきたいと思います。日本版は米国とはちょっと違います。
 日本では、「進取の精神が旺盛で価値を生み出す地元の中小企業が長生きして繁栄するようなビジネス環境をテーラーメイドでつくる」ことが大事です。他の地域のパクリだけでは駄目です。エコノミックガーデニングの先進事例はありますが、同じようにやってもうまくいきません。土壌が違いますから。自分たちの生態系に合うような戦略にしていかないと効果は上がらないし、長持ちしません。
 先行事例をご紹介します。関東地方で行っているのは千葉県山武市です。山武市は、市役所と商工会青年部とが共同で実施している珍しい事例です。残りの地域は全部、市役所(官)中心で行っています。山武市の人口は5万人くらいです。2014年に市役所職員に対してエコノミックガーデニングの講演会を行いました。講演会に来ていた副市長が、小さな企業もサポートできないかということで、商工会青年部と市役所の合同打ち合わせが行われ、翌年には準備委員会が発足しました。月1回の準備委員会をとおして市役所の方と商工会青年部の方たちの目線を合わせていきました。2016年4月に実施段階に入り推進協議会ができました。協議会の中には地元の人でつくるワーキンググループがあり条例に向けた勉強会を行っています。

地域の戦略に基づいた事業
 誠実経済への4つ目のステップは、戦略に基づいて企業経営の変革を図る各種の事業が行われることです。
地元には様々な中小企業があって、それぞれに合った施策があります。中小企業を「ターゲット市場」、「事業変革の目標」、「地域経済への効果」の各項目に基づいて5つに分類した表があります。私独自の呼称ですが、まず種別「鶴亀」は老舗企業のことを指します。急成長はしませんが長生きします。ですから地域経済への貢献は、安定した雇用です。次に、種別「臥龍鳳雛(がりょうほうすう)」は、中国の『三国志』に出てくる言葉で、地に伏した龍と鳳凰の雛、まだ空を飛んではいないのですが、ひとたび飛び立てばグローバル市場まで飛んでいく急成長企業のことを指します。地域経済への貢献は、新しい雇用を生み出すことです。種別「若虎」は、地元が基盤で活動意欲のある若い企業のことで、新しい雇用をつくります。
 例えば、ある地域では雇用拡大が必要だと考えた場合、臥龍鳳雛か若虎に焦点を当てなければいけません。小規模事業者や社会事業家(起業家)を対象に支援をしてしまうと、雇用の拡大は難しくなります。ターゲットを間違えると大変です、という行政へのメッセージです。

事業の改善〜「企業変革支援プログラム」の活用
 さて、経営者の方へのメッセージです。中小企業での経営と事業の改革が地域活性化には欠かせません。周りが応援しても経営者の方がうまく経営していかないと地域経済は活性化しません。ポイントは、先ほど申し上げた年収400万円以上、夜間労働がない、土日は休みにすることです。これらは若者には魅力です。また、会社の方向性や事業の社会的必要性に納得して働いてもらうことが大切です。納得すれば若者はちゃんと働いてくれますので、どれだけ納得してもらうかがポイントです。
 それから、これら労働環境づくりと事業承継が可能な財務と経営を目指すカギは、同友会で発行している『企業変革支援プログラム・ステップ1と2』です。これは、自社の経営を自己診断するもので、取り組みをやればやるほど効果は高まります。
 企業変革支援プログラムを以前に日本生産性本部にいた方に見ていただいたら、非常によく出来ていると言っていました。特に「人を生かす経営の実践」という観点は日本生産性本部にはなかったです、と言われました。この観点は同友会が重視する労使関係や経営指針から出てくるものですから。これがあるのは、同友会の企業変革支援プログラムだけです。経営コンサルタントにはない視点です。

条例、戦略、経営改善事業の三位一体
 話を戻しますが、大事なのは実践的戦略がどうして必要かということです。条例が重要だと先ほど話しましたが、条例だけあってもうまくいかないのです。条例があっても具体化していく枠組み、戦略がなければ実際に中小企業の振興を図ることはできません。ですから、こういった三位一体が必要です。1つ目は地域経済生態系の一部である「中小企業振興基本条例」。2つ目は、実践的戦略、例えば「エコノミックガーデニング」、3つ目は、「経営と事業の改善」です。これが、地域経済が良くなるための三位一体であり、日本独自の組み合わせです。
 中小企業振興基本条例は地域内連携の仕組みを確立します。行政、経営者、大企業、教育機関それぞれの役割が定められています。また、中小企業の重要性が書かれています。しかし条例には、どういう産業、企業を優先するかは書かれていませんし、書いてはいけないのです。ですから戦略レベルで決めていくしかないのです。例えば長寿企業を後押しするのか、あるいは雇用を拡大する企業を後押しするのか。そして、戦略に基づいて様々な施策がつくられます。施策をうけて経営改善が進められます。条例、戦略、事業改善施策の3つがうまく連動すれば地元経済が良くなっていくでしょう。
 企業支援についてですが、ポイントは情報提供です。ビッグデータの活用、図書館の活用、地元金融機関の活用です。先ほど事例にあげました千葉県山武市では市立図書館の活用でがんばっています。本来、図書館でのサービスはすべての住民にとって公平でなければいけないので、ビジネスを優先することは厳密にいうとグレーなところらしいのですが、いま山武市の中小企業振興基本条例にそれを可能にすることを盛り込むことを計画しています。

感謝の言葉
 誠実経済への5つ目のステップ、「感謝の言葉」についてお話します。なぜこれが誠実経済につながるのか。それは、感謝されるとやる気が出るからです。
 一昨年、国連が2015年から30年までにかけて世界中で取り組む「SDGs(持続可能な開発目標)」というものを定めました。日本含め各国政府が取り組んでいます。面白いのは、企業がビジネスチャンスとして取り組み始めたことです。ボランティア、CSR(企業の社会的責任)という話ではなく、開発目標に合致しているところに投資することを新しく始めているのです。そうすると地元社会が「持続可能な開発目標」の実現に貢献したら、国際社会から感謝され、新しい地域プライドが形成されることにつながっていきます。

エコノミックガーデニング実践への工夫〜山武市の事例
 最後に、エコノミックガーデニングの実践への工夫ですが、いくつかあります。
 誰かが「やろう」と言わなければ始まりません。山武市の場合は私の講演を聴いた市の職員の方が、山武市の職員研修会に呼んでいただき、そのときに話を聴いた副市長が発起しました。そして今につながります。
 エコノミックガーデニングにむけて、まず地元を調査したり地元企業と接したりする、コアチームが必要です。ここで気を付けたいのは、市役所だけがそこを担うと限界があるということです。市役所の人事異動のために担当者が頻繁に変わってしまうと、地元企業の方と信頼関係を築きにくいです。コアチームが地元の地域経済生態系の調査、地元中小企業の実態調査の結果に基づいてメニューをつくって長期的な予算を確保します。
 エコノミックガーデニングの実施上の注意ですが、「ガーデニング」という現在進行形の言葉が示すとおり、常に耕し続けていく必要があります。経済環境、企業の状況が常に変わり続けるからです。取り組み始めてから効果が出てくるまで4年から6年はかかるでしょう。すると、どうしても首長と議会の選挙にぶつかります。エコノミックガーデニングの準備を進めていても、選挙で首長が変わってしまうと、頓挫したり重要度が下がったりしてしまいます。エコノミックガーデニングは政治に弱いという点があります。だから民間のパートナーが必要です。行政と民間が組んで、それが条例に裏付けされているものなら、首長が変わっても同じような取り組みが可能です。 だから条例が大事なのです。
 そして条例だけでは実践が進まないので、条例を具体化する戦略が必要です。そして条例と戦略の応援を受けて各企業が「企業変革支援プログラム」などを活用して経営を良くしていけば、地域経済の未来はそんなに悪くないと思います。

       (事務局 牧本)


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